高橋工芸の工房を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト - ページ3
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特集 高橋工芸の工房を訪ねて

3. Kami glassができるまで

工房の様子

高橋工芸の工房は、簡単に写真におさまってしまう広さ。
2階建てとはいえ、決して広いとはいえません。
機械の轟音が鳴り響き、たまに止まると、びっくりするような静寂が訪れます。
そのなかで黙々と作業を行っているスタッフは全員家族。
お父さんの昭一さんと、秀寿さん、奥さんの利佳さん、そして親戚の叔母さんと息子さんの5人です。
こんなに小さな空間で、少人数でのものづくり。
一体どのように行われているのでしょうか。

代表作のKami glassができるまでを見せていただきました。

木材の仕入れ・乾燥

積み上げられたセンの木

工房の外にずらりと積み上げられたセンの木の角材。
全部使ってKami glassをつくると、なんと3万個近くにもなる量です。
「なかなか木材の確保が難しくて。
最近いい業者に出会ったから、思い切って2年分の材料を買い占めちゃったんです」。

旭川は家具の街。家具用に薄く製材された木はたくさん売っていますが、
テーブルウェアをつくるための厚みを残した木材は、なかなか手に入らないそうです。
そのため高橋工芸では、山に木が生えている状態から丸太で買い付け、
製材所に持ち込んで角材にしています。
その木をこうして、約1年間、工房の隣で寝かして乾燥させ、反りや縮みを落ち着かせます。

粗削り

角材をカット

いよいよ加工開始!
まずは角材を電動のこぎりでざっくりカット。

角材を丸くする

カットした角材のまわりを削って、
一気に筒状にしていきます。

角材を丸くする

かつお節のようなおがくずが飛び散り、
あっという間にまん丸に!

正確なサイズにカット

さらに完成形にあわせて正確にサイズを測り、
カットします。

木工旋盤でくり抜いた木

そして「木工旋盤」という機械で中をくり抜きます。
Kamiシリーズの薄さの理由が隠された
「木工旋盤」は、高橋工芸の企業秘密。
残念ながら撮影はNGです。

乾燥

天井で乾燥

木をくり抜いたら、まずは自然乾燥させます。
乾燥させる場所は、なんと天井!
「毎朝、おがくずを燃やして火を焚いているんです。
暖かい空気は上の方にいくものなので、あえて天井で乾かすことで、効率よく乾燥させています」。

乾燥機

十分に自然乾燥させた木は、
さらに人工的に乾かし、水分を抜いていきます。
まずは55℃くらいに温度調整した乾燥機で、
2~3日かけてゆっくり乾燥させます。
あまりに高温で乾燥させると、木の繊維が傷んでしまうため、温度管理には気をつかいます。

電子レンジ

次に登場するのは、スーパーやコンビニでよく見かける業務用の電子レンジ。
これで木をチンするというから驚きです。
「電子レンジを使って低温でゆっくり乾燥させ、
木ごとに違う水分量のバラつきを整えるんです」。
電子レンジから出したら、自然の水分を吸わせて、
過度の乾燥を防ぎます。


こうして長い工程を経て乾燥させた木材。
加工を始める時点では、水分保有量が20%弱程度ですが、
天井での自然乾燥で10%、乾燥機で6%前後にまで減っていくそう。
木によって乾燥状態が異なるため、
ひとつひとつの木と対話をしながら水分量を見極めています。

成形

乾燥後のKami glass

木は乾燥させることで5mmほど縮むため、
しっかり乾燥させてから、さらに薄く仕上げます。

サンドペーパーがけ

「木工旋盤」で内側を整えた後、
3種類のサンドペーパーをかけて磨きます。

外側を磨く

最後に、木の型にはめた状態で、外側を整えます。
磨き上げられた木の肌に触れてみると、
まるで赤ちゃんのほっぺのよう。
頬ずりしたくなるようなすべすべ感です。

塗装・仕上げ

塗装を行う様子

学校給食の食器などにも採用されている、
食器用ポリウレタンで表面を塗装します。
下塗りとして刷毛と吹き付けで塗装し、ペーパーをかけて、中塗り、仕上げの本塗りと続きます。

塗料の配合は木の状態にあわせて毎回変えています。
下塗りで木に塗料を染み込ませ、
中塗りでガラスのようなつるつるの状態に。木を水から守る効果があります。

中塗りまでを施したCara

中塗りまでを施した状態だと、
光が反射するくらいツルピカ。
塗装が違うだけで、大きく印象が異なります。

塗装中の商品

仕上げの塗料は、
シリーズごとに質感を変えているそう。
「Kamiシリーズは、自然の木の良さが生きる
マットな仕上げに。
市販の塗料ではどうしても艶がでてしまったため、
メーカーに特注しています」。

仕上げ

そしていよいよ最後の工程。
数種類のサンドペーパーで磨いて完成です。

Kami glass完成形

出来上がったKami glassは
こんなにも手がかかっているとは思えないくらい
とてもシンプル。
薄さゆえに口当たりがよく、軽いことが特徴です。
塗装されているので、水にも強く、
日常使いのコップとして活躍します。

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