木箸しのはらの工房を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト
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工房訪問 木箸しのはらの工房を訪ねて

2019年11月公開

 

毎日の食事に欠かせない「箸」。
手の大きさや好みなどで、使い心地がいいと感じる箸は一人一人異なります。
東京都葛飾区に工房を構える
「木箸(きばし)しのはら」の3代目・吉成金房(よしなりかねふさ)さんは、
長年培ったノウハウをもとに、
一人でも多くの人に満足してもらえるような箸づくりを追求しています。
新しいものを取り入れていくフットワークの軽さと
熱い探求心を持って箸づくりに取り組む、吉成さんの工房を訪ねました。



 

1.手に馴染む箸が生まれる場所

使い心地を追及して生まれた
「天削丸(てんそぎまる)の木箸」

天削丸桜

▲凹凸が特徴的な「天削丸の木箸」。木の風合いを活かした素朴なデザインは、和洋どちらの食卓でも似合います。

箸は毎日使うもの。
つまむ、つかむ、裂く、ほぐす、切る、混ぜる……。
たった2本の棒でありながら、少し考えただけでも
たくさんの働きが思い浮かぶ、なんとも優秀な道具です。
日本での歴史は古く、所説ありますが、
7世紀頃に遣隋使によって中国から伝わってきたそう。
現在では私たち日本人の食卓に欠かせない存在です。
日々の食卓で何気なく使っていますが、箸の使い心地は一人一人違います。
毎日使って口に入れるものだから、箸こそ自分に合ったものを手にしたいものです。

東京の下町・葛飾区四つ木に工房を構える
「木箸(きばし)しのはら」の代表作「天削丸の木箸」は、
そんな要望にしっかり応えてくれる箸。

木箸しのはらとの出会いは、この「天削丸の木箸」がきっかけでした。
2013年に取り扱いをスタートした当初からcotogotoの人気商品です。
リピートして購入してくださるお客様も多く、
現在まで続く大ヒットロングセラー商品なのです。

天削丸部分

▲「天削丸の木箸」の商品名の由来でもある、持ち手の先を丸く削る「天削丸」という仕上げ。やわらかく、親しみやすい印象を受けます。

  • 天削丸食い先

    ▲口の中に入る食い先は、細く仕上げることで豆や魚の骨までつまみやすく、ストレスを感じません。口に触れる面積が最小限になることで異物感も感じにくくなり、より美味しく食事を楽しめます。

  • 持ち手凹凸

    ▲ランダムに見えつつ、計算して削られている表面の凹凸。指に馴染み、握りやすさは抜群。

「天削丸の木箸」は特徴的な凹凸に指が馴染み、持ちやすさに定評がある箸です。
その上、細い食い先のおかげで小さく細かい食材もつかみやすく、
口に当たる箸の違和感も最小限に。
「桜」、「鉄木(てつぼく)」、「黒檀(こくたん)」の3つの木材を使用し、
材ごとに異なる木目の美しさを楽しんでもらえるように無着色塗装を採用。
箸一膳にいくつもの工夫がうかがえます。

人気の秘密とどんな風につくられているのかを知りたくて、
東京都葛飾区にある工房にお邪魔しました。

3代続く箸工房

玄関

▲木箸しのはらの玄関口。自宅と工房が同じ敷地にあります。吉成さんのお父様にあたる先代が一時期塗り箸をつくっていたことから、「しのはら塗工所」の看板が残されています。

工房のある葛飾区四つ木は真新しい住宅やスーパーなどがある中にも、
木造でできた平屋や年季の入った商店などいわゆる東京の下町の様相を残し、
親しみやすさが感じられる地域。
荒川の河川敷にほど近いところにある四つ木駅から、
迷路のように細い道をいくつか入っていくと工房が見えてきます。
密集した住宅地の中にあり、工房にしてはコンパクト。
「工房名は、この辺りのかつての地名である『篠原(しのはら)』から取ったんです」と
出迎えてくれたのは、木箸しのはらの3代目・吉成金房(よしなりかねふさ)さんです。

吉成金房さん

▲木箸しのはら3代目・吉成金房さん。

竹製や金属製のものから、
漆を塗って金箔などを散りばめた「若狭塗箸」や「輪島塗箸」のような豪奢なつくりのものまで
一言で箸といっても種類はさまざま。
数ある箸の中で、木箸しのはらでつくる箸は
主に東京でつくられてきた「唐木箸(からきばし)」と呼ばれているものです。
唐木とは、東南アジアから輸入され、遣唐使によって唐より伝来した木材の総称のことで、
主に「紫檀(したん)」、「鉄刀木(たがやさん)」、「黒檀(こくたん)」などのことをいいます。
かつて火事の多かった江戸では、
焼け残った端材などを集めて箸をつくる箸屋が増えたことから、木箸づくりが盛んに。
このとき、唐木が使われていたため、唐木箸と呼ばれるようになりました。
一般的に漆を施す塗り箸は、漆を塗ることによって強度を高めます。
そのため、材料である木材の強度は、そこまで重要視されません。
対して、唐木箸は漆などで補強しなくても、
箸として使い続けるのに適した強度、耐久性を持った材料を使っているのが特徴です。
また、唐木箸のほとんどが木によって異なる木目や色、
質感の違いを楽しめるよう、無塗装で仕上げられています。

葛飾区近辺では昔から箸屋が多かったこともあり、
昭和初期、吉成さんのお祖父様にあたる初代が四つ木の隣町の葛飾区立石で箸づくりをスタート。
初代は兄弟5人で箸屋を切り盛りしていましたが、吉成さんのお父様である2代目のときに独立、
現在の四つ木に「しのはら塗工所」として工房を構えます。
一時漆を施した塗り箸に挑戦した時期もありましたが、
伝統的な無塗装仕上げの箸づくりを極めてきました。
かたちも四角く、持ち手が少し膨らんだ「胴張り」といわれる
唐木箸のスタンダードなもののみをつくっていたと言います。

しかし、吉成さんの代からは、新しいかたちの箸づくりにも挑戦。
「安価な箸がたくさん売られる大量生産の時代という流れもあって、
箸職人としてのこれからを考えたとき、
量より質、使いやすさにこだわった箸が求められるようになると思ったんです。
だから一人でも多くの人の手に合うように、
七角や八角、そして天削丸などいろんなかたちに挑戦しました」。

さまざまなかたちの箸

▲吉成さんが挑戦したさまざまなかたちの箸。左から「天削丸の木箸」、「楕円型」、「八角箸」、両端が細い「利休箸」、「丸型」、「胴張り」。

さらに、ウレタンなどの無着色塗装を採用。
先代が極めた無塗装のままだと、カビなどで木が黒ずんでしまいやすく、
長く使い続けられないという問題がありましたが、
塗装を施すことで水に強く、カビにくくなり、日々の生活でも扱いやすくなったのです。
もちろん漆を施しても水に強くなりますが、木目が隠れて、木の質感がなくなってしまいます。
吉成さんは、無着色塗装にすることで木の風合いを残しながら、
現代の暮らしで使いやすいよう工夫をしています。

そういった柔軟な対応が功を奏し、まわりの箸屋がなくなっていく中、
3代に渡り箸づくりを続けてこれたのです。 
  

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