産地別のうつわ 中国・四国編 | うつわのいろは | cotogoto コトゴト
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うつわのいろは 産地別のうつわ 中国・四国編

産地別のうつわ 中国・四国編


日本のうつわは、各地で地域の特色を反映して発展してきました。
「産地別のうつわ」では、数ある産地の中から、
地域別に代表的な産地と、そのうつわの特徴を紹介します。
今回は「中国・四国編」です。


中国・四国地方には、地域ごとに特色ある焼き物の産地が点在しています。
朝鮮に近い日本海側の地域では、
豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れ帰った陶工により築かれた
「石見焼(いわみやき)」や「萩焼(はぎやき)」が。
「備前焼(びぜんやき)」は、中世から現代まで続く日本を代表する窯
「日本六古窯(ろっこよう)」の一つとして古くから栄えました。
四国には、藍染のための大甕などの「大谷焼(おおたにやき)」や、
地域で採掘される砥石の屑の活用から生まれた「砥部焼(とべやき)」などがあります。


  • 島根県江津市

    石見焼(いわみやき)



    地域で採れる緻密な土を使った、丈夫な陶器。
    16世紀末に朝鮮から連れてこられた陶工たちによりはじまり、
    他地域の技術を取り入れながら発展しました。
    石見地方で採れる土は割れにくい上、吸水性が低く、
    酸やアルカリ、塩分に強い頑丈なもの。
    高温で焼成するので、陶器でありながら磁器並みの強度があります。
    その性質を活かして、「はんど(はんどう)」と呼ばれる貯水などに使われる
    大きな水甕の生産で栄えました。
    1000軒を超えた窯の数も、
    時代が変わり水甕が必要とされなくなった今では
    10軒以下となりましたが、
    壷やすり鉢などの実用の器を中心につくり続けています。

    【お取り扱いのあるブランド】

    • 石州嶋田窯

      1935年に開窯。今でも石見で登り窯にこだわり続ける唯一の窯元です。大きな甕を得意としていますが、時代に合わせて小さな壷もつくっています。耐酸・耐塩性のある土を活かした壷は、梅干しや塩の保存にぴったり。素朴ながら、愛嬌のあるかたちで人気です。

    • 「すり鉢 (松野屋)」製造元
      元重製陶所

      年間約30万個のすり鉢を手がける、国内有数のすり鉢メーカー。磁器並みの強度がある石見焼は、細かなクシ目も欠けにくく、すり鉢にぴったり。地元の来待石(きまちいし)からつくる、鉄分を多く含む茶色の「来待釉」をかけて仕上げ、マットな落ち着いた風合いです。

  • 岡山県備前市

    備前焼(びぜんやき)

    画像提供:協同組合岡山県備前焼陶友会


    釉薬を使わずに仕上げた、赤褐色の肌が特徴のせっ器。
    「日本六古窯」の一つで、そのルーツは古墳時代にまで遡ります。
    「ひよせ」と呼ばれる地域で採れる土は、釉薬がのりにくい性質のため、
    釉薬をかけずとも長時間かけて焼き締めることで耐久性を強めています。
    その強度は「投げても割れない」と評されるほど。
    最大の特徴は、一貫して釉薬を使わず絵つけも施さず、
    「窯変(ようへん)」によって生じる力強い表情。
    窯変とは、窯の中で土や釉薬と炎が作用して偶然に生まれる変化のことで、
    一つとして同じものにはならない面白さがあります。

  • 山口県萩市

    萩焼(はぎやき)


    画像提供:萩焼会館

    土のやわらかな風合いを感じられる、あたたかみのある陶器。
    その起源は、16世紀に朝鮮から連れられてきた陶工たちにあります。
    ざっくりとした土を使った優しい風合いが特徴で、
    吸水性が高いため使うほどに表情の変化を楽しめます。
    かつて茶陶の世界でも愛された萩焼は、徐々に茶の色が染みて
    表情が変化してくる様を「萩の七化け」として評価されました。
    白い釉薬のところどころに桃色が浮かび上がるなど、
    自然の作用により生まれる窯変も大事にしています。

  • 徳島県鳴門市

    大谷焼(おおたにやき)


    画像提供:公益社団法人 徳島県物産協会

    巨大な甕に代表される、素朴で実用的な陶器。
    1780年、江戸時代後期に磁器が焼かれましたが、
    地元で原料が採れなかったため廃止に。
    その後1784年に信楽焼より学び、陶器の生産がはじまりました。
    「寝ロクロ」と呼ばれる1人が成形し、
    もう1人が寝転んでロクロを蹴って回すという製法により、
    身の丈ほどの大きさの甕などをつくってきました。
    この甕は徳島の藍染に使われる液を入れるためなどに使われ、
    甕を焼くための登り窯は日本一の大きさといわれています。
    最近では湯のみや茶碗、酒器などの小さなものも多く生産。
    地域で採れる土は鉄分が多く、ざらりとした質感に金属のような光沢があり、
    その素朴な風合いで人気です。

  • 愛媛県砥部町

    砥部焼(とべやき)



    手描きの絵つけが親しみをもてる磁器。
    古くから砥部の山では砥石が切り出され、
    その屑を使って藩が独自に磁器の研究を行い、1777年に生まれました。
    一時は瀬戸などにおける陶磁器産業の機械化により、
    手仕事にこだわる砥部焼は衰退しますが、
    柳宗悦らが推進する民藝運動の中で評価され再興。
    筆で勢いよく描かれた唐草模様など、あたたかみのある絵つけが特徴的です。

    【お取り扱いのあるブランド】

    • 長戸製陶所/陶彩窯

      親子3人で営む窯元。「染付古砥部文」シリーズは、4代目・長戸裕夢(ひろむ)さんが江戸時代に定番だった文様を参考に手がけています。「玉縁(たまぶち)」と呼ばれる丸みのある縁や、江戸時代に庶民の器として親しまれた高台の大きな「くらわんか碗」など、砥部焼の伝統的なかたちを取り入れるだけでなく、ミカンの木を釉薬の原料に使うなど、柔軟なものづくりを行っています。

    • 「dandan (イイホシユミコ)」製造元
      すこし屋

      今の暮らしに合うモダンな砥部焼づくりに取り組む窯元。磁器作家であるイイホシユミコさんと共につくった「dandan(ダンダン)」は、和食だけでなく洋食の席にもしっくりくる新しいかたちの飯碗です。マットな質感の白い釉薬を得意とし、さらりと手になじむ親しみやすい白に仕上がっています。



※参考書籍:
「産地別 やきものの見わけ方」佐々木秀憲監修(東京美術)
「伝統工芸 青山スクエア」

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