産地別のうつわ 関東編
日本のうつわは、各地で地域の特色を反映して発展してきました。
「産地別のうつわ」では、数ある産地の中から、
地域別に代表的な産地と、そのうつわの特徴を紹介します。
今回は「関東編」です。
関東では、大消費地である東京に近いことから、
普段使いのうつわをつくる産地が栄えました。
茨城、栃木では、近隣で採れる土を使った陶器が、
東京では眼鏡や風鈴などを原点とするガラスが、
神奈川では豊富な木材資源を活かした漆器づくりが行われています。
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茨城県笠間市
笠間焼(かさまやき)
画像提供:(一財)伝統的工芸品産業振興協会
開かれた自由闊達な空気のなかで生まれる、個性豊かな陶器。
1770年代頃に、信楽焼の陶工の指導によりはじまり、
焼き物の産地としては関東では最古です。
甕やすり鉢などの丈夫な日用雑器がつくられてきました。
戦後は、県や市が支援して陶工を育成。
「特徴のないのが特徴」といわれるほど、窯元ごとの自由な作風が魅力です。
それぞれが時代のニーズにあわせたうつわをつくっています。
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栃木県益子町
益子焼(ましこやき)
画像提供:栃木県産業労働観光部工業振興課
民藝運動の影響を色濃く残す陶器。
山一つ隔てた笠間で修行した陶工が、
1853年に益子で窯を築いたことがはじまりの産地です。
1924年、民藝運動を推進した陶芸家・濱田庄司氏が移住。
「用の美」を追求したうつわがつくられ、他の陶工にも影響を与えます。
益子の土は砂気が多く粘りが少ないため、やや肉厚につくることで生まれる
素朴なぬくもりがあります。
また、くすんだ赤色の「柿釉」や「緑釉(灰釉)」といった伝統的な釉薬も特徴的。
現在でも250ほどの窯元があり、開放的で自由な空気のなか、
民藝運動の流れを汲んだ実用的なうつわがつくられています。
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東京都江東区、江戸川区、墨田区など
江戸硝子(えどがらす)
画像提供:一般社団法人東部硝子工業会
江戸時代により伝わる製法を継承して、手仕事でつくられているガラス。
江戸(東京)におけるガラスづくりは、18世紀初頭に眼鏡や風鈴がつくられたのがはじまり。
主に、自由に成形できる「宙吹き(ちゅうぶき)」、金型に吹き込む「型吹き」、
型で挟みプレスする「押し型」の三つの製法を使い、多種多様なうつわをつくっています。
また、江戸硝子に切子細工を施した「江戸切子」も伝統工芸品として有名です。
職人による優れた加工技術と、独創的なデザイン性が魅力です。
【お取り扱いのあるブランド】
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松徳硝子
1922年、電球用ガラスの生産工場として創業し、電球に必要とされる薄吹きの技術を活かした薄吹きグラスの製造へ転換。職人による手仕事にこだわり、その繊細な飲み口が料亭や割烹で長く愛用されてきました。品質改良を重ねた結果、1mmにも満たない薄さの「うすはり」グラスが誕生。飲み物を「より美味しく飲むことが出来るグラス」として、高い評価を得ています。
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Sghr スガハラ
昭和7年、東京にてガラス食器の製造を開始した菅原工芸硝子株式会社。現在は千葉県の九十九里町にて、変わらず手仕事でガラス製造を続けています。約40名の職人を有し、手仕事のガラス工房として国内有数の規模を誇ります。普段の生活にもしっくりとはまり、さらに、日常の中の特別な時間も演出してくれるガラスのうつわをつくっています。
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神奈川県小田原市
小田原漆器(おだわらしっき)
画像提供:一般社団法人箱根物産連合会
高い挽物の技術と、木目の美しさを活かした漆器。
室町時代中期に、箱根山系の豊富な木材を活用してはじまり、
挽物の技術を用いて椀やお盆などがつくられきました。
主な材はケヤキで、その木目を楽しめるよう、
「擦漆塗(すりうるしぬり)」や「木地呂塗(きじろぬり)」など
漆の下から木目が透けて見える技法が多く用いられています。
また硬く強度があるケヤキを使用することで、ゆがみが少なく
堅牢なつくりが自慢です。
【お取り扱いのあるブランド】
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薗部産業
1949年創業。当初は引出物など、ギフト向けの漆のお盆や菓子鉢などが主力商品でした。現在では漆器だけでなく、挽物の技術を活かしたウレタン塗装のお椀「銘木椀」が人気。「無理なく、無駄なく、土に還るまで、木を始末よく使い回す」をモットーに、木屑までをも無駄にせず、ものづくりをしています。
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※参考書籍:
「産地別 やきものの見わけ方」佐々木秀憲監修(東京美術)
「民藝の教科書② うつわ」久野恵一監修/萩原健太郎著(グラフィック社)
「伝統工芸 青山スクエア」