うつわの技法 木 成形編
うつわは使い勝手をよくしたり、見た目を美しくしたりするために、
陶磁器や木などの素材ごとに、さまざまな技法が用いられます。
「うつわの技法」では、数ある技法のなかから、
cotogotoで取り扱っているうつわにも使われている技法を取り上げています。
木編では、「成形」や「表面仕上げ」の技法を扱います。今回は成形編です。
木のうつわは、かたちによって用いられる成形の技法が異なります。
cotogotoで取り扱うのは、手で刳り抜くことで、どんなかたちもつくれる「刳物(くりもの)」、
ロクロを使って正円形の椀や平皿をつくれる「挽物(ひきもの)」、
薄い板状の木を曲げて弁当箱などをつくれる「曲物(まげもの)」、
そして板状の木を組み合わせて重箱のような四角い箱物をつくれる「指物(さしもの)」です。
刳物は個性ある彫り跡が楽しめる、曲げ物は曲線が美しいなど、それぞれに見所があります。
各技法の特徴を知れば、さらに木のうつわの楽しみ方が広がるはずです。
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1.刳物(くりもの)
「ノミ」や「カンナ」と呼ばれる
木工用の道具などを使って、
手で木を刳り抜き、自在にかたちを削り出す技法。
彫った跡をあえてはっきりと残すつくり手も多く、
手仕事のぬくもりを感じられるのも魅力です。
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富士山を模した豆皿。
どんなかたちのうつわも自在につくれるのも刳物の魅力の一つです。
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大胆に彫られた跡が、うつわに力強い印象を与えています。
彫り跡が織り成す陰影がアクセントに。
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シンプルな四角のうつわ。
彫り跡が加わるだけで温かく、表情豊かに仕上がります。
詳しくはcoguの工房訪問へ。
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2.挽物(ひきもの)
「木工旋盤(せんばん)」とも呼ばれる
木工用の「ロクロ(轆轤)」を使います。
ロクロに木材を固定し回転させ、
刃物を当てて挽く(削る)技法です。
椀や平皿など、正円形のものをつくることができます。
美しく整ったかたちのものが生まれます。
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北海道産のシナの木をロクロで挽き、卵の殻のようにすべすべと滑らかに仕上げました。
どんな食卓にも合う、シンプルで飽きのこないデザインです。
詳しくは高橋工芸の工房訪問へ。 -
しっかり平らな底面から、キリリと立ち上がる縁が特徴的。
シャープで整った印象の平皿は、挽物ならではです。 -
お椀の多くもロクロで挽いてつくられます。
薄すぎず、厚すぎない絶妙な厚みに挽くには、熟練の技が必要です。
詳しくは薗部産業の工房訪問へ。 -
ロクロで挽いたお椀の上に漆を施すと、漆器のお椀のできあがり。
そっと縁が反った滑らかなフォルムは、とろっと艶やかな漆がよく映えます。
詳しくは輪島キリモトの工房訪問へ。
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3.曲物(まげもの)
木を薄い板状にして湾曲させて筒状にする技法。
側面を曲げて底板をはめた平皿や、
蓋を付けて弁当箱などに多く使われます。
木は曲げやすい杉などが用いられ、
留め具は桜の皮が主流です。
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秋田杉を曲げてつくった皿。
滑らかな曲線の美しさは曲物ならではです。
とても軽く、お盆としても重宝します。
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底と蓋には杉、側面には檜を使用。
檜は杉より強度があり、曲げるには技術を要しますが、側面に適した素材です。
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4.指物(さしもの)
金属の釘を使わずに、
板状の木を指し合わせて(組み合わせて)
かたちづくる技法。
重箱や弁当箱など、四角い箱状のものを
つくることができます。
ピシッと折り目正しく、凛とした印象です。-
木の板に施された「ほぞ」と呼ばれる突起を、別の板の溝にパズルのように噛み合わせる「組子」の技法を用いて、箱状にしています。
組み合わせたことで生まれる模様がデザインのアクセントに。 -
板状のあすなろの木を組み合わせ、朴(ほお)の木を留め具にしてつないだ弁当箱。
時間をかけて乾燥させた木は狂いが少なく、ぴったりと隙間なくつくられています。
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