2018年3月公開
独特の香りとほろ苦さが
草木が芽吹く春のエネルギーを感じさせるふきのとう。
雪解けとともに姿をあらわす、春を告げる山菜のひとつです。
おひたしや和えもの、天ぷらなどいろいろな食べ方がありますが、
味噌と合わせて練り上げると苦味がほどよくやわらぎ、また保存が利きます。
ふわりと軽やかな「ふき味噌」を、料理研究家・久保香菜子さんに教わりました。
そのまま白いごはんのお供にするのはもちろん、
ほんのり焦がしても香ばしく、炒め物の調味料にしても苦味が絶妙のアクセントに。
「さわらのふき味噌焼き」と「ふき味噌のチャンプルー」のつくり方もご紹介します。
ほろ苦い味わいが春を告げる、ふきのとう
雪が解けはじめる頃に芽吹く「ふきのとう」は、ふきの蕾部分。
開花してしまうと苦味が増すので、
蕾がかたく閉じたものを食します。
苦味の成分には肝機能を高め新陳代謝を促す作用があり、
独特な香りは胃腸の働きをよくする作用があります。
冬の間に滞りがちな巡りを活性化し、
体の中に春を呼び込む山菜のひとつです。
きれいな緑色で、乾燥していないものを選びましょう。
教えていただいたのは…
料理研究家 久保香菜子さん
高校生の頃から京都の老舗料亭「たん熊北店」にて懐石料理を学び、同志社大学英文学科卒業後、辻調理師専門学校に入学。調理師免許、ふぐ調理免許を取得。その後、出版社で料理書の編集に携わり、独立。テレビや書籍、雑誌、Webサイトでの料理製作、スタイリングの他、レストランのメニュー開発・テーブルコーディネイト、編集など、食に関するジャンルを問わず活動中。「旬の味手帖 秋と冬」「きちんと、おいしい 昔ながらの料理」(ともに成美堂出版)、「きちんと、野菜の小鉢」(河出書房新社)など、著書多数。オフィシャルサイトは、こちらから。
材料(つくりやすい分量/
完成量約240g)
- ふきのとう…9個(65g)
- ごま油…大さじ1/2
- 信州味噌…100g
(クセのない淡色味噌) - 酒…大さじ2
- みりん…大さじ2
- グラニュー糖…25g
- 卵黄…1個
(A)
1.ふきのとうは根元の茶色くなった部分を少し落としてから、粗めのみじん切りにします。すぐに色が茶色くなってしまうので、切ったものから水に放してアクを抜きます。
2.すべて切り終わったら、ざるに上げてしっかり絞り、水気を切ります。
3.鍋にごま油を熱し、2を加えてしんなりするまで炒めます。
4.火から外し、(A)を加えて溶きのばします。
5.火にかけて練っていきます。最初は強火、ふちが沸いてきたら弱火で、混ぜながら練り上げます。
【ポイント】
火にかけている間は、鍋肌についたものも落としながら、絶え間なく混ぜ続けます。卵がいり卵にならないよう、均等に火を入れていきます。
6.マヨネーズくらいのかたさになって、ヘラで混ぜたときに鍋底が見えるようになったら火から外して完成です。冷蔵で2週間保存可能です。
久保さんが選んだ器は…
ボウルセット S (ONE KILN)
桜島の火山灰を配合した釉薬を使い、メタリックな質感が印象的な磁器製フタ付きボウル。「とろりとした形状なので、カップ型のものが便利です。ムラのある黒色は料理うつりがいいですね。『ふき味噌』が映えます」
淡白な白身魚も味噌を塗って焼くと、旨みと香ばしさが加わりふくよかな一品に。
「ふき味噌」を使えば、ほのかな苦味も合わさって春の味。
いつもの焼き魚がぐんと特別な一皿に仕上がります。
どうせなら、盛り付けにもこだわりたいもの。
和食の基本から懐石料理まで造詣が深い久保さんに、
和食における魚の基本的な盛り付け方も教わりました。
とはいえ、難しいことはなし。
ちょっとした心遣いが、魚をより美味しくいただけるコツのようです。
材料(2人分)
- 「ふき味噌」…大さじ2
- さわら…2切れ(1切れ90~100g)
- きゅうり…4cm
- 昆布…2cm角
- 塩…各適宜
- 南天の葉…適宜 ※南天や紅葉など、皆敷(かいしき)は季節を表現するものですが、ベビーリーフなどでも。なるべく美しいかたちの葉を選んでのせます。お好みの葉で楽しみましょう。
(前盛り)
(皆敷)
つくり方
1. 前盛りを用意します。きゅうりは、切り離されるぎりぎりのところまで1mm幅程度に薄く切り込みを入れながら、1/4のところにきたら切り離します。残りも同じように切り込みを入れながら切り分けます。2%程度の塩水に昆布2cm角とともに20分程度漬け込みます。
【ポイント】
前盛りは、箸休め。途中で味に変化をつけることで、最後まで飽きずに魚を美味しくいただけます。そのため、メインとなる魚と味がかぶらないものを用意します。味噌焼きや照り焼きなど味の濃いものには、塩か酢のもの。塩焼きなど淡白なものには、酢かしょうゆのものを添えるのが基本の考え方です。漬物や佃煮、塩昆布なども前盛りになります。
2. さわらは両面に軽く塩(分量外)を振って10分置きます。さっと洗って水気を拭き、よく熱したオーブントースターかグリルの中火で焼きます。
3. 2に火が通ったら、取り出して「ふき味噌」を表の面に塗り、再度味噌に軽く焦げ目がつく程度に、上火を強火にして焼きます。
4. 皿の左上に皆敷を敷き、中央に魚、右下に前盛りという並びで盛り付けます。
久保さんが選んだ器は…
角皿 墨貫入 210 白(南景製陶園)
釉薬に入るヒビ「貫入(かんにゅう)」に墨を流し込み、より模様として浮かび上がらせた角皿。「皆敷や前盛りも含め、魚を盛り付けて窮屈な感じのしない、ちょうどいいサイズです。貫入が入って表情があり、あたたかみのある白色も、まだ肌寒さも残る3月に合うのではないでしょうか」
肉や野菜を豆腐と一緒に炒めて卵を絡めた、沖縄の定番料理「チャンプルー」。
今回は、春野菜のアスパラを使い、「ふき味噌」で調味。
滑らかな豆腐と卵の食感が合わさってふわりと軽やか、春らしい炒め物になりました。
そのうえ「ふき味噌」のほんのりした苦味がアクセントになって
いくらでも食べられてしまいそうなおかずです。
材料(2~3人分)
- 「ふき味噌」…75g
- 牛挽き肉…70g
- グリーンアスパラガス…3本(100g)
- ごま油…小さじ1
- 木綿豆腐…1丁
- 卵…1個
- 削りかつお…3g
つくり方
1. アスパラは根元を1~2cm切り落とし、根元から半分くらいまでピーラーで皮を剥きます。斜めに1cm幅に切ります。
2. フライパンにごま油入れて中火にかけ、牛挽き肉を加えて炒めます。ぽろぽろになってきたら、1を加えて炒めます。
3.アスパラの芯が少し残る程度まで炒めたら、水を捨てた豆腐を加えます。火力を中火強に上げ、木ベラで大きく割りながら汁気を飛ばすよう炒めます。
4.豆腐の汁気が飛ぶくらいまで炒めたら中火に戻し、「ふき味噌」を加えて炒め合わせます。
5.ほぐした卵を加え、炒め合わせます。火を止めて削りかつおを加え、ざっくりと混ぜ合わせます。
久保さんが選んだ器は…
しのぎ平皿 大 白 (宋艸窯)
潔いほど真っ平らで、縁の線模様のしのぎがアクセントとなった平皿。「かた過ぎず素朴過ぎない、いい塩梅の器ですね。春先のあたたかい感じもしてきます。緑がかった『わら白』と迷いましたが、白の方が『ふき味噌』を使ったチャンプルーと馴染み過ぎずに引き立ててくれると思います」