やさしい甘みとほくほくとした食感が、しみじみと美味しい栗。
秋の代名詞とも言える食材のひとつですが、安く出回る時期はほんのひととき。
下処理や皮剥きにひと手間かかるから、ついつい億劫に思っていると、
あっと言う間に食べそびれてしまうことも……。
でも実は、ちょっとしたコツを知っていれば、ぐんと楽に栗が扱えるようになるのです。
砂糖を使った「シロップ煮」は、冷蔵で約1ヵ月保存が可能。
たくさん出回る時期にまとめてつくっておけば、
そのまま食べても栗本来の味わいを楽しめ、
さらに素材としてお菓子などにもアレンジできます。
栗の上手な扱い方も含め、「栗のシロップ煮」とそのアレンジ方法を
料理研究家・飯塚有紀子さんに教えていただきました。
ほくほくして上品な甘みが美味しい栗
9~10月に出回る栗。
英語では、「chestnut(チェスナット)」と言われる通り、
木の実の一種です。
他のナッツ類に比べ脂質が少なく、主成分がでんぷんで、
豆類や芋類に近い味わいです。
栗選びのポイントは、色ツヤがよく、
かたちが丸くてふっくらしているかどうか。
すぐに調理できない場合は、1.5%の塩水に一晩つけた後、
水気を拭き取り、新聞紙にくるんでビニール袋に入れ、
冷蔵庫へ。翌日、一度新聞紙を取り替えます。
その後、週に一度の頻度で新聞紙を取替えていけば、
1ヵ月ほどもたせることが可能です。
教えていただいたのは…
料理研究家 飯塚有紀子さん
グラフィックデザイナーを経て、2000年にお菓子教室「un pur…(アンピュール)」をスタート。「un pur…」とは、フランス語で「純粋な」「まじりけのない」という意味。日常のひとつひとつのちいさな<un pur…>な気持ちを大切に、教室をはじめ、雑誌や書籍、webサイトなどで、家庭でつくれる丁寧なお菓子づくりを伝えています。「やさしいお菓子-すべての手順が写真でわかる10枚レシピ-」(雷鳥社)、「つくりおきでスイーツ」(東京地図出版)他、著書多数。デザイナーの経歴を生かし、著書のレシピ本のデザイン、パッケ-ジデザインも含めた商品開発なども手掛けています。
「un pur…」のサイトは、こちらから。
材料(つくりやすい分量)
- 栗(皮つき)…1kg
- 水…1L
- 塩…大さじ1
- 水…1L
- 塩…大さじ1
- 水…300ml
- グラニュー糖…300g
(下処理用)
(下茹で用)
(シロップ)
※ブランデー30mlを加えると、さらに香り高く、日持ちもよくなります。お好みでお試しください。
1.下処理をします。水1Lに塩大さじ1を加えた塩水に、栗を一晩つけます。栗から余分な水分が出るので日持ちがよくなり、茹で上がりが早くなります。また、栗の中に虫がいた場合、塩水につけることで、虫を追い出すことにも。
2.一晩経ったら、つけていた塩水を捨て、再度ボウルに入れて沸騰したお湯(分量外)を栗にかぶるまで入れ、10分ほど置きます。お湯につけることで、皮が柔らかくなり剥きやすくなります。
3.外側の硬い皮(鬼皮)と内側の柔らかい皮(渋皮)を剥いていきます。まずはじめに、栗の底を少し切り落とします。
4.切り口から、鬼皮をつまんで剥きます。
5.渋皮を剥きます。最初に側面の渋皮をぐるっと一回り剥きます。
6.残った渋皮は、それぞれ横→横→真ん中の順に剥くと、刃跡がきれいに仕上がります。渋皮が残ると、煮たときに色が悪くなるので、栗の内側に渋皮が食い込んでいる部分も、庖丁でえぐるようにしっかり取り除きます。
7.色をきれいに仕上げるため、下茹でして栗のアクを抜きます。鍋に下茹で用の水と塩を入れ火にかけ、沸騰したら弱火にして栗を入れます。
【ポイント】
金属反応で栗の色が悪くなってしまうので、アルミの鍋は避けてください。琺瑯またはステンレスの鍋がおすすめです。
8.栗が煮崩れないよう弱火のまま、キッチンペーパーでフタをして、30分~1時間ほど煮ます。
【ポイント】
キッチンペーパーで蓋をするのは、栗が浮いてきて茹でムラができるのを防ぐため。落とし蓋だと、栗が湯に触れていない部分ができてしまうため、キッチンペーパーがおすすめです。
9.栗の茹で具合を竹串で確認します。すっと串が入りやわらかくなっていたら茹で上がり。ざるに上げて水を切ります。
【ポイント】
下茹での茹で加減が、シロップ煮をほくほくに仕上げる最大のポイント。シロップで煮ると栗が引き締まり少し硬くなるので、下茹での段階で十分やわらかく煮ておきます。
10.鍋にシロップの材料を入れ(ブランデーを入れる場合は、ここで一緒に入れます)、沸騰したら弱火にし、栗を静かに入れます。キッチンペーパーで蓋をして、再沸騰してきたら火を止めます。冷めるときに味が染み込むため、鍋のまま完全に冷めるまで置いておきます。
11.完成。煮沸した密閉容器に入れて、冷蔵保存します。シロップに漬かっている状態なら、約1ヵ月保存可能です。
【ポイント】
保存するときは、容器の蓋をする前に、ラップなどで内蓋をすると、栗がシロップにしっかりつかっている状態が保てます。
飯塚さんが選んだ器は…
花彫皿 小皿
菊皿 小皿
(JICON・磁今)
シンプルに栗そのものを味わうシロップ煮をのせるのに飯塚さんが選んだのは、料理が映える白色で、花を模したかたちの可憐な印象の小皿2枚でした。「煮た栗が映える器だと思います。シロップ煮は、一度にたくさん食べるものではないので、小さなお皿にちょこんとのせると可愛らしいデザートになるんです。人が来たときにお茶に添えてもいいですね。のせるお菓子を引き立てるシンプルな器が好きなのですが、この2枚は、和の雰囲気がありつつ、洋菓子にも合いそうなところがいいなと思います」