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鋼(はがね)
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鉄に炭素が0.6%以上含まれた金属を「鋼(はがね)」と言い、
昔から包丁の材料として使われてきました。
鋼でつくられた包丁は、切れ味がよく、研ぎやすいのが特長。
ただ、サビやすいので、小まめに拭くなどひと手間が必要です。
鋼には、含まれる不純物や金属の配合具合でさまざまな種類があり、
それが包丁の価格や特徴にも関係しています。
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ステンレス
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鉄に、サビにくい金属であるクロムが10.5%以上含まれた金属を
「ステンレス」と言います。
サビに強いのでお手入れに気を使わずに済むのはうれしいところ。
ステンレスも鋼同様、他の物質を加えることで
さまざまな種類が生み出されています。
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素材だけでなく、刃の形状や用途に応じて、たくさんの種類が存在する包丁。
使い方やお手入れのやり方の前に、まずは包丁の基礎知識をおさらいしましょう。-
和包丁と洋包丁
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<和包丁>
魚や野菜中心の日本の食文化とともに発展してきた日本生まれの包丁。
刃と柄は、鋲などで完全に一体化せず、「中子(なかご)」と呼ばれる金属の部分を、
木製やプラ製の柄に差し込んであります。
そのため、柄の刺し替えがしやすくなっているのが特徴です。 -
<洋包丁>
明治時代に洋食とともに日本に入ってきた包丁。
柄で中子を挟み込んで鋲や接着剤で固定しているため、
基本的に柄の交換はできません。
また、刃と柄を一体成形しているものも洋包丁に含まれます。
柄の構造により「和包丁」と「洋包丁」に分けられます。
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刃の構造
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<片刃>
刃の片側だけが砥がれた形状。
食材と刃が密着するので、食材の断面がきれいに仕上がります。
刺身など、包丁を斜めにして切る作業はお手の物。
また、野菜などの皮を薄く剥くのにも適しています。
そのため、プロの料理人の中には片刃を使う人が多いといいます。
刃の向きで右利き用・左利き用があり、利き手用でないものを選ぶと使いづらいので、要注意。 -
<両刃>
刃の表と裏、両方から砥がれた形状。
食材に真っ直ぐに刃が入るので、とくに技術がなくても使いやすく、
三徳包丁やぺティナイフなど、家庭で一般的に使われている包丁に用いられます。
刃の構造によっても分類できます。「片刃」と「両刃」があります。
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包丁の種類
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<三徳包丁>
肉・魚・野菜の調理に使用することができることから「三徳」と呼ばれている包丁。
日本では、もともと野菜や魚中心の食生活だったため、
野菜や魚を切るための包丁が発達していました。
そこに明治期、肉食文化とともに肉切包丁が持ち込まれ、それまでの包丁スタイルに肉切の要素も加わって独自に発展したのが、三徳包丁です。
骨などの硬いものまでは切れませんが、これ1本でたいていの料理が可能なため、
家庭で多く使われています。 -
<ぺティナイフ>
「ぺティ」は、小さいという意味。幅が狭くて細長い、先の尖ったかたちの包丁です。
果物の皮むきや、野菜の飾り切りなど、細かな作業に向いています。 -
<パン切り包丁>
やわらかいパンもつぶさずに切れるよう、刃がのこぎりのような波刃になった包丁。
刃が特殊な形状のため、自分では研ぎ直しができません。
和包丁、洋包丁ともに、食材や調理方法に合わせてさまざまな種類の包丁があります。
ここでは一般的に家庭でよく使われている、これさえあればひとまず十分というものをご紹介します。
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食器用洗剤をつけて洗う
鋼
ステンレス
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「最初に使う前に、刃部を食器用洗剤を付けたスポンジでよく洗い、すすぎます。
刃こぼれやがたつきがないかも確認してください」(庖丁工房タダフサ、la base)。
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漬物やレモンを切ったらすぐに洗う
鋼
ステンレス
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「塩分や酸性の強い食品(漬物、柑橘類)を切ったときは、
なるべく早く包丁を洗います。
そのまま放置すると、サビや変色の原因になることがあります」
(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la base)。
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やってはいけない使い方
鋼
ステンレス
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<刃を左右に動かして無理やり切る>
カボチャのような硬い野菜を切るときなど、
「絶対に無理に横方向に動かしながら切らないでください。
刃欠け、折れ、割れが起きたり、刃先が曲がることがあります」
(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la base)。 -
<硬すぎるものを切る>
家庭でよく使われている三徳包丁やぺティナイフなどは、
切れ味をよくするために刃が薄くつくられています。
そのため、「魚や肉の太い骨や、カチコチに冷凍されたもの、
硬い餅などは切らないでください」(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la base)。
硬いものには、刃が厚くつくられている包丁を使うようにします。 -
<硬いものの上での使用>
「金属や石など硬いものの上では使用しないでください。
刃こぼれすることがあります」(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la base)。
まな板は、木製やプラスチック製を使います。
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食器用洗剤を付けて洗う
鋼
ステンレス
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「使用後は、食器用洗剤を付けたスポンジなどで洗い、水気をよく拭き取ります」
(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la base)。
また、「仕上げに、熱めのお湯をかけると水分が蒸発しやすくなります」
(庖丁工房タダフサ)。
サビにくいと言われるステンレスでも、 「包丁に汚れや水分が残った状態だと、
ステンレスの表面にサビを保護する皮膜ができにくくなり、サビの原因となります」
(GLOBAL)。
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やってはいけない洗い方
鋼
ステンレス
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「サビや破損の原因になることがあるため、食器洗浄機は使用しないでください」
(GLOBAL、庖丁工房タダフサ、la basee)。
「食器洗い乾燥機用のアルカリ性の洗剤もよくありません」(GLOBAL)。
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切れ味が悪くなったら
鋼
ステンレス
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包丁は、使ううちに刃先が磨耗し切れにくくなっていきます。
切れない包丁は、使いづらいだけでなく、ケガにつながる恐れがあります。
「トマトの薄切りがしづらくなった、玉ねぎを切ると涙が出るなど、
切れ味が悪くなったと感じたら砥いでください」
(庖丁工房タダフサ)。
砥石を使うのが、昔ながらのやり方。
刃先の様子を見ながら、微細な調整が可能になりますが、
コツをつかんで慣れるまでは難しいと感じる方もいるかもしれません。
もっと手軽に研ぎたい方は、シャープナーを使うのもおすすめ。
また、自分で研ぐのが難しい場合や、刃先が折れたり、かたちが変わってしまった場合は、
メーカーで砥ぎ直しのサービスを行っているところもあります。
※パン切り包丁のような波刃は、特殊な刃の形状のため、メーカーにお問合せください。
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1
砥石の表面に凹凸がないかを確認し、桶など水を張ったところに、気泡が出なくなるまで、約20分程度つけておきます。
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2
砥ぐ際に動いてしまわないよう、布巾をしいた上に砥石を置きます。
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3
包丁を砥ぐときは、先端・真ん中・手元と部位を分けて砥ぎます。
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4
砥石の上に包丁を置きます。(左利きの方は柄が左側になるように置きます)このとき、砥石に対して、包丁が約45度になるようにします。
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5
刃先を砥石に付けた状態で、包丁が砥石に対して15~20度(10円玉3枚を重ねたくらい)になるよう包丁の背の部分を浮かせます。角度が大きくなると、刃が鈍角になり切れにくくなるので、要注意。
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6
このとき、包丁を持っていない方の手を刃の腹に添えると、安定して包丁を動かすことができます。
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7
手前から奥へ押し出すように動かし、戻すときは無理に力を入れず軽く戻す、を繰り返します。どろどろっとした「砥泥(とどろ、とでい)」が出ますが、包丁を砥ぐのに必要なものなので、そのまま続けます。
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8
矢印の方向に指を当て、刃の部分に金属カスによる出っ張り「かえり(バリ)」を感じたら砥げている証拠。次の部位へと移ります。
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9
表面を研ぎ終わったら、ひっくり返して裏面を研ぎます。このときも、刃先を軸にして砥石との角度が15~20度になるようにします。
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10
「かえり」ができているか確認します。
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11
仕上げにもう一度表面に戻し、刃先を軸にして15~20度の角度で2~3回研ぐと、かえりが取れます。
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12
洗って水気を拭き、乾かします。
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1
台などの平らな面に、各商品の取扱い説明書に記載されている向きにならって置きます。左利きの方は、反転させます。
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2
包丁の刃元をシャープナーの砥石のくぼみに垂直に当てます。
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3
3. 手前に向かって、刃先まで引きます。6~10回、切れ味がよくなるまで繰り返します。
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4
洗って水気を拭き、乾かします。
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<プロに頼む>
自分で砥ぐのは難しい方は、包丁メーカーが行っている「砥ぎ直し」をご利用ください。
有料のところがほとんどですが、プロに砥いでもらえば間違いなし。
とくに、自分が持っているメーカーに頼むと安心です。
※料金など詳細は、各メーカーにお問合せください。
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サビてしまったら
鋼
ステンレス
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「鋼の包丁は、水にさらした状態で放置するとすぐにサビてしまいます。
表面がステンレスの包丁は、サビにくくなっていますが、
汚れや水分が付着した状態で放置するとサビることがあります。
万が一赤サビが発生した場合は、
研磨剤を含んだクレンザーなどで擦り落としてください」(庖丁工房タダフサ)。
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<砥石で砥ぐ>
片刃か両刃によって研ぎ方が変わりますが、ここでは一般的に家庭でよく使われている両刃の砥ぎ方をご紹介します。
砥石は、刃物を研ぐための石で、粒度によって「荒砥(あらと)」「中砥(ちゅうと)」「仕上げ砥(しあげと)」があります。
刃こぼれや刃欠けがある場合は「荒砥」、より刃の表面を滑らかにし食材の切り口にこだわる場合は「仕上げ砥」など、
目的によって選びますが、「家庭での普段使いの場合は、中砥の800~1000番台のものひとつで事足ります」
(GLOBAL、庖丁工房タダフサ)。<シャープナーで砥ぐ>
誰でも簡単に包丁を砥ぐことができるシャープナー。片刃専用、両刃専用と使用できる刃の種類が決まっているので、使用している包丁に合ったものを使います。
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<包丁用語集>
- 鋼(はがね)
- 鉄に炭素が0.6%以上含まれた金属のこと。昔から、包丁の素材として使われてきました。含まれる不純物や金属の配合具合でさまざまな種類があります。
- 和包丁と洋包丁
- もともと日本にあったのが「和包丁」。明治期に肉食文化とともに日本にやってきたのが「洋包丁」です。その違いは、柄の構造にあります。刃と柄を鋲などで完全に固定してしまうのが洋包丁で、柄に刃を差し込んだものが和包丁です。和包丁は柄の交換が容易になっています。
- 片刃と両刃
- 刃を片面だけ砥いだものが「片刃」、両面とも砥いだものが「両刃」です。片刃の場合、右利き用と左利き用があります。刃の砥ぎ方なども片刃か両刃かによって違ってきます。
- 三徳包丁
- 肉・魚・野菜の調理が1本でできるため「三徳」と呼ばれる包丁のこと。家庭向きです。
- ぺティナイフ
- 「ぺティ(小さい)」という名の通り、幅が狭くて細長い、先の尖った包丁のこと。細かな作業に向いています。
- パン切りナイフ
- やわらかいパンもつぶさず、硬めのパンも切りやすいよう、刃がのこぎりのような波刃になった包丁のこと。
- 砥石
- 刃物を砥ぐための石。粒度により「荒砥(あらと)」「中砥(ちゅうと)」「仕上げ砥(しあげと)」があります。
- シャープナー
- 包丁を簡易的に砥ぐための道具。ダイヤモンド粒子が付いた棒で刃をなでるようなハンディタイプから、セラミック製の2つのローラーの間を押したり引いたりして刃を砥ぐロールタイプなど、さまざまな形状があります。