季色

 

肉厚でぷっくりとしたかたちが可愛らしい多肉植物。
葉に水分や栄養素を蓄え、雨がほとんど降らない乾燥地帯でも
みずみずしく生き延びていけるしなやかさは、見ているだけでなんだか元気が出てきます。
多様でユニークなかたちや色を持つ多肉植物は、組み合わせることでさらに魅力を増します。
初心者でもすぐにできる多肉植物の寄せ植え方を、
多肉植物に特化したアレンジを提案するTOKIIRO(ときいろ)の近藤義展(よしのぶ)さんに教わりました。

時間の経過とストーリーのある寄せ植え

まずは、どんな寄せ植えをつくりたいかをイメージするところから。
旅行先など、今までに訪れた場所で印象に残った風景を思い浮かべたり、
器からイメージを膨らませます。


完成図

今回義展さんが選んだ器は、カップとソーサー。
ソーサーを組み合わせるからこそのアレンジを思いついたのだとか。
「成長してカップからあふれた多肉植物がソーサーの方まで伸びて、
そこでまた根をはる……その時間の経過を表現したいと思いました」と義展さん。

TOKIIROさんがアレンジでが大切にしているのは、
「時間の経過」と「ストーリー」を盛り込むこと。
TOKIIROさんのつくるアレンジは、“植えられた”感がなく、
“何もなかったところに、自然と多肉植物が生えてきた"よう。
だからこそ、多肉植物がより瑞々しく魅力的に見えるのです。

今回は、そんな生き生きとした寄せ植えのつくり方を学んでいきます。

 
使用した多肉植物
使用した多肉植物

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覆輪万年草(フクリンマンネンソウ) 銀明色(ギンメイショク) トリカラー パンクチュラータ

使用した器
「ReIRABO(リイラボ) カップ S(イイホシユミコ)」
「ReIRABO ラウンドプレート S(イイホシユミコ)」

用意するもの

寄せ植えに必要な道具は、意外とシンプル。多肉植物の苗と土以外は、家にあるもので代用もできます。
深さのある器を使う場合は、水はけをよくするため底にしく小石も準備しましょう。


用意するもの
 

>> 器とアレンジ例を見る

  • 1.器
  • 植木鉢はもちろん、マグや蕎麦猪口など底に穴が開いていない器も使えます。 自分が好きな器の方が育てる楽しみがあるので、ぜひ器として好きなものを使ってみてください。 ただ、小さめの器の方が寄せ植えの世界観を表現しやすいため、 まずは蕎麦猪口くらい(約直径80×高さ60mm)を目安に選びます。 深さが浅いと根の剪定が必要になるので、高さは4cm程度のものがおすすめです。

  • 2.多肉植物の苗
  • 多肉植物にはさまざまな種類があります。 成長期が同じで、さらに原産国が同じなど育つ環境が近いと、水やりのタイミングなども似ているため育てやすくなります。 また、どんな寄せ植えにするかのイメージで、色、かたちを選びます。 その際、上に伸びていくのか横に広がっていくのか、そのまま大きくなっていくのかなど、 育ち方を考慮するのがポイント。 品種については、お店の人に相談したり、ネットなどで品種名から検索できます。

  • 3.土
  • 多肉植物やサボテン用の土。器のサイズで土の細かさを変えます。 今回は小さい器なので細かいものを選んでいます。
  • 4.土入れ
  • 園芸用の土入れ。小さいシャベルや、小麦粉や砂糖をすくうスクープなどでもOK。

  • 5.フラワーアレンジ用ワイヤー
  • Uピンのようなかたちに加工して、苗を押さえるために使用します。 多肉植物の大きさで太さを選択。今回は24番を使用。

  • 6.ピンセット
  • 寄せ植えでできた隙間にさらに苗を加えたり、苗を土にしっかり植え込むときにあると便利。

  • 7.木製の棒(マドラー)
  • コーヒーショップなどにあるような木のマドラーがおすすめ。 最後に土を下に押し込むときに使用します。 器のかたちに沿ってしなるような、硬すぎないものがベスト。

  • 8.ハサミ
  • ワイヤーを切るのに使用。普通のクラフト用のハサミで大丈夫です。

  • 9.トレー
  • なくても寄せ植えはできますが、作業中にこぼれる土を受けたり、アレンジ前に苗を並べたり、あるとなにかと便利です。

つくり方

イメージが膨らみ、道具を用意したら、寄せ植えをはじめましょう。

 
  • 1.

    手順

    苗をポットから取り出します。
    プラスチックの鉢の部分を指でもんで土をやわらかくしてポットから取り出しやすくしたら、苗を持って上向きに引き出します。

  • 【ポイント!】


    手順

    引き出すとき、ポットを逆さにしないように要注意。土が葉と葉の間に挟まると取れにくく、仕上がりの見た目が悪くなってしまいます。

  • 2.

    根の下半分をひきちぎる

    ひとつのポットに苗が群生しているものは、苗をカップから引き出したあと、根の下半分の絡み合った部分を引きちぎります。そうすることで、苗が分かれやすくなります。

  • 3.

    分解する

    残った部分の根をほぐしていきます。ほぐすうちに自然と苗と苗の分かれ目がわかってくるので、そこで苗と苗を分けていきます。

  • 4.

    根の下半分をひきちぎる

    寄せ植えのイメージよりも大きい場合は、剪定します。

  • 【ポイント!】


    分解する

    剪定した根がついていない多肉植物は、別の容器で乾いた土にさして、直射日光に当てないように1〜2週間置いておくと根が生えてきます。次のアレンジのときにも使えるので、ぜひ育てましょう。

  • 5.

    手順

    根をほぐしながら、余分な土を落とします。その際古くて機能していない根も一緒に落ちます。

  • 6.

    手順

    苗を、並べます。メインの多肉植物、その次に中心となるものなどを分けて並べると、植えるときにわかりやすくなります。

  • 7.

    手順

    ワイヤーをU字型にしたものをつくります。長さが器の高さより短くなるようにします。

  • 8.

    手順

    器に土を入れます。量は、器の上から3〜4cmのところまで。このとき、ぎゅうぎゅうと詰め込まず、ふわっとさせておきます。深さがある器の場合は、器の上から8〜10cmほど残して、底に小石をしいてから土を入れます。

  • 9.

    手順

    苗を入れていきます。
    細かな多肉植物は、数種類まとめてブーケをつくります。
    違う種類の苗と苗を絡めるようにブーケをつくことで、 それぞれの多肉植物が、時間をかけ、隙間を求めて生え進んでいるように見え、時間の経過を感じさせることができます。

  • 10.

    手順

    器の側面に土を寄せて少し盛り上げて、ブーケにした苗を立て掛けます。

  • 【ポイント!】


    手順

    立たせたい苗があったら、茎をまたぐようにU字型ピンをさして固定します。

  • 11.

    手順

    今回はカップの下にソーサーを置くため、多肉植物が育ってカップからこぼれ落ちている様子を表現することに。自然に伸びてきた感じを出すためには、育つ想定で苗を選ぶのではなく、今の段階でイメージ通りのかたちになっているものを選びます。

  • 12.

    手順

    メインになる大きめの多肉植物を入れます。正面がある場合は、正面から少しずらすと自然な印象に。それまで入っていた苗にかぶせるように乗せ、U字型ピンで固定。土を足します。

  • 13.

    手順

    サブメインとなる多肉植物を入れます。自然なかたちに仕上げるため、メインとサブメインの隙間を埋めるための多肉植物を入れます。メインとサブメインに挟まれて見えなくなってしまう可能性がありますが、より自然体に近づけるためには必要なのです。

  • 14.

    手順

    上に向かって伸びていく種類の多肉植物でブーケをつくり、器に入れます。

  • 15.

    手順

    隙間を残った苗で埋め、器の側面に沿うようにマドラーを差し込み、土をしっかり下の方まで送り込みます。

  • 16.

    手順

    全体を見回して、植えている最中に倒れてきた苗を直します。U字型ピンを使うか、隙間に別の苗を差し込んで支えます。

  • 17.

    手順

    カップ&ソーサーという器ならではの演出をします。「カップからこぼれて下に伸びてきた多肉植物が、ソーサーにも根付いて生え続けている」というイメージを表現するため、ソーサー部分にも土と多肉植物を置きます。

  • 18.

    手順

    完成です。

上手な育て方

丹精込めて寄せ植えした多肉植物とずっと一緒に暮らすために、
育てる環境や水やりについても知っておきましょう。
ただし、季節や日当たり、風通しなどによっても違ってくるので、
育てている多肉植物をよく観察して、いろいろ試してみてください。

 

<置く場所>

基本は屋外。太陽光が当たり、風通しがいいところがベスト。
多肉植物は、原産地が乾燥地帯のものが多いので、
なるべくその環境に近づけることがすくすくと育つポイントです。

雨に当たっても大丈夫ですが、2日以上連続して雨が当たらないようにします。
葉にある気孔が閉じて二酸化炭素不足になり、栄養が足りなくなってしまうのです。
とくに、多肉植物はもともと昼は気孔を閉じ、夜に開いて二酸化炭素を取り入れるため、
夜の雨に気をつけましょう。

屋内であれば、太陽光がよく当たる窓際へ。全体に満遍なく太陽光が当たるように、
ときどき窓に向いている側を替えてください。
夏場に出かけて部屋を閉め切る場合は、雨が直接当たらない屋外に出します。

 

<水やり>

寄せ植えした直後

●直後〜1週間後

植えてから1週間の間は水を与えません。
土が乾いた状態にすると、多肉植物が生きようとして、早く環境に順応できるようになります。
水を与えると成長しようとしなくなってしまうのです。

●1週間後

水やりをします。
水やりの方法は、器に穴が開いているか否かで変わります。

穴が開いている場合:
器の底に開いている穴から、水がジャージャー出るくらいたっぷりと水をやります。
霧吹きなどでは、根まで水が届きません。

穴が開いていない場合:
器の1/3量を目安に水をかけ、徐々に根まで浸透させるようにします。
器から溢れるくらい水をやり、多肉植物を押さえて器を傾け水を抜くという方法もありますが、
水が残ってしまうと根腐れが起きるので要注意。
また夏場は、器の中に水が溜まっていると、熱せられてお湯になり、多肉植物が弱ることもあるので、
しっかり水を抜くようにします。

●2週間後

土の状態をチェックします。
マドラーか竹串などを土に刺し、土の乾き具合をチェックします。
ここで土がマドラーについてくるようなら、置き場や置く向きなどを変えてみます。
屋外がベストですが、室内なら窓際など日当たりがよく風通しのいい場所を選びましょう。
乾いていたら、その場所で大丈夫。その場でまた1週間置きます。

●3週間後

水やりをします。

 

 

普段の水やり

水やりの道具

寄せ植えから3週間後以降は、水やり→1週間後チェック→1週間そのまま→水やりと、
2週おきを目処に水やりをします。
ただ、環境にもよるので、自分の家に合った水やりの周期をつかむことが大切です。

また、葉が小さいものほど水分を蓄える量が少ないので、
観察していてふにゃっとしているものがあったら、
その多肉植物にだけピンポイントに水を与えるようにしてください。
写真のような、先が細くなった水差しがあると便利です。

水やりの時間帯は、基本的にいつでもOK。
夏場は、夕方涼しくなってから水やりをした方が、器の中の水がお湯にならずにいいという説と、
朝暑くなる前に水を与えることで土の温度が下がっていいという説といろいろあります。
置いている場所によるため、様子を見ながら、
育てている多肉植物が一番元気な様子でいられるタイミングを探してみてください。

寄せ植えQ&A

いざ実際に自分でやってみようとすると、あれこれ疑問がわいてくるもの。
これから多肉植物の寄せ植えをはじめる人が知りたくなることを
まとめて義展さんにお伺いしました。

 

Q1.

寄せ植えにする多肉植物に相性はありますか?

A1.

水やりをやりやすくするため、原産国の環境が似ていたり、
成長期が同じものの方が相性がいいです。
TOKIIROがアレンジに使うものは、ベンケイソウ科がほとんど。
お店の人に聞いたり、品種名をネットなどで検索すると調べられます。
TOKIIRO監修の本「アレンジが広がる多肉植物ずかん
〜種類別にわかる育て方・飾り方」
を参考にしても。

Q2.

使用する多肉植物は何を基準に選べばいいですか?

A2.

上に伸びるのか、横に広がるかなど、どう育っていくかで選びます。
同じベンケイソウ科のものでも、「属」によって違います。
例えば、
・エケベリア属:増えるよりもその場で大きくなる。
・セダム属:土を覆い隠すように広がっていく。
・クラッスラ属:上にひょろひょろと伸びていく。
・グラプトペタルム属:ジグザグに茎を伸ばしていく。

Q3.

寄せ植えをするベストシーズンはいつですか?

A3.

その多肉植物の成長期です。
例えばベンケイソウ科の場合は、春と秋が成長期のものが多いです。
成長期以外に植え替えをすると枯れる可能性もあります。
寄せ植えをする時間は、朝でも昼でも夜でも大丈夫です。

Q4.

寄せ植えをしてしばらくしてから、配置を変えたくなったらどうすればいいですか?

A5.

根が伸びて絡み合っている可能性があるので、
一度全部取り出して、根をほぐして分解し、やりなおしてください。

Q5.

寄せ植えにした多肉植物の一種類だけが枯れてしまったら?

A6.

枯れてしまったところにできた隙間を器の内側に向かって詰め、
外側にまた新しいものを植えてください。
根を痛めずに新しい多肉植物を追加できます。

Q6.

次に植え替えるタイミングはいつ頃ですか?

A7.

植え替えても植え替えなくても、どちらでもいいです。
成長していくと、器から多肉植物が溢れていきますが、それも楽しむのもひとつ。
背が高くなりすぎたら、適当な長さに剪定してもいいです。
切り取った多肉植物は、乾いた土にさせばまた根が出てきます。

 

TOKIIROさんのこと

TOKIIROの2人

季(とき)の色を暮らしに演出

一年を通して枯れることなく、季節によって花芽を付けたり紅葉したりと変化も楽しめ、
“暮らしを共にしている”と思わせてくれる多肉植物。
そんな多肉植物に特化したアレンジを提案する「TOKIIRO」は、
近藤義展さん・友美さんご夫婦によるユニットです。

2009年から活動をはじめ、イベントへの出店やワークショップの他、
千葉県の浦安にあるアトリエで多肉植物のアレンジを展示販売しています。
TOKIIROさんのアレンジの特徴は、
あたかも何年もかけて植物と植物が絡み合い、自然とかたちを成したような「時間の経過」や、
自分が小さくなって多肉植物の森に入り込んだら……などのように「ストーリー」があること。
「これから寄せ植えをしようと多肉植物の苗を並べたときって、
いろいろな色えんぴつを並べて、
白いキャンパスにどう絵を描いていこうかとわくわくする気持ちと同じなんです」と義展さん。
つくる本人が一番わくわくしているから、
TOKIIROさんのアレンジを見ると、
なんだか新しい世界の扉を開けるような、きらきらした気持ちになるのです。

 

はじまりは「嫁の笑顔が見たくて」

実は2人とも、TOKIIROをはじめるまではまったく植物とは関係のない仕事をしていました。
たまたま訪れた八ヶ岳で多肉植物のリースに出会い、友美さんが一目惚れ。
義展さんが友美さんを喜ばせようと、本を見ながらはじめてリースをつくってみたところ、
思っていた以上に喜んでもらえたのだとか。
それがとてもうれしかった義展さんは、次から次へとアレンジをつくり続け、
本に載っていたすべてのものをつくってしまいます。

家で飾っていたのが評判になり、頼まれてご近所さんのためにアレンジをつくるように。
まとめて材料などを仕入れた方が、安くつくってあげられるのではと
2009年から「TOKIIRO」としての活動をスタート。
「手づくり市」に出店するなど、いわゆる多肉植物屋とは違う、
作家として多肉植物のアレンジに取り組んでいます。

2013年に千葉県の浦安にアトリエが完成し、
現在は、イベントへの出店やワークショップの他、週4回はアトリエを開け、
多肉植物の展示・販売だけでなく、
来ていただいた方にゆっくりしていってほしいとカフェも営業しています。

はじめは友美さんの笑顔が見たくてはじめた多肉植物のアレンジが、
ご近所の人たち、そして、今ではもっともっと多くの人たちを笑顔にしているのです。

 

>> TOKIIROさんのサイトはこちら

TOKIIRO×手仕事の器

器からインスピレーションを受けることも多いというTOKIIROさん。
さまざまな手仕事の器に、思い思いの多肉植物をアレンジしていただきました。
TOKIIROさんの世界観が合わさると、食卓で使うときとは違った器の表情が見えてくるから不思議です。

※今回ご紹介しているアレンジのやり方に、水耕栽培の方法は含まれていません。

ご利用ガイド