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宋艸窯の工房を訪ねて

3. 自由から生まれるものづくり

宋艸窯工房

▲自然豊かな工房の中庭。工房にはギャラリーと、竹之内さんのご両親のご自宅が併設されています。


工房のなかで作業をしていると、窓の外からは蝉の声が。
開けっ放しになった工房の扉からは、虫たちが自由に出入りします。
工房の周りには緑が生い茂り、やわらかい日差しが差し込んでいます。

「こういう環境でつくっているということが、
作品にも滲み出たらいいなと思って」と話す竹之内さんの言葉通り、
うつわにも鹿児島ののびのびとした空気を感じます。

毎日、朝9時から夜7時くらいまで、
ほとんど決まった休みはなく働いているという竹之内さん。
「自営ですから、働かなくっちゃ」と言いながらも、
その表情に切迫感はありません。
「自分がやりたいことをやっていて、
誰かにやらされているわけじゃないですからね」。

「本焼きの日は朝6時に火を入れて、
夜中の2時くらいまでかかるから、
その次の日は休もうかなと、
作陶のリズムに合わせて生活しています」と、
まさに焼き物中心の暮らしです。


竹之内眞弓さんの箸置き

▲竹之内さんの奥様、眞弓さんがつくった箸置き。鹿児島のシンボル、桜島がモチーフです。
眞弓さんは竹之内さんの仕事を手伝いながら、小物の制作も行っています。

土を殺さない仕事がしたい

土

竹之内さんの作陶の姿勢は、陶芸をはじめるきっかけにもなった、
川喜田半泥子氏から影響を受けていると言います。

川喜田氏は、「おれはろくろのまわるまま」という名言を残した人物。
作陶中に生まれたゆがみや傷を景色とし、
自然の産物に美を見出しました。
「僕も土をねじ伏せるんじゃなくて、
殺さないように仕事したいと思っています。
頭の中で描いていたものを完璧にかたちにするんじゃなくて、
ゆがみなど土から自然に生まれるものを、プラスに取り入れたいんです」。

ろくろでつくっている「しのぎ平皿」も、
実は型を使ってもっと簡単につくることができます。
予め型に模様を入れておけば、鎬を施すのもあっという間。
「だけど、型でつくったものは、すべてが同じで味気ない。
なるべく土の個性を活かせるようなつくり方をすることで、
それぞれのうつわに異なる表情が現れたら」とこだわりを語ります。

好きなものを、好きなように

竹之内さんとお父さん、二代でつないできた宋艸窯。
それぞれが好きなものをつくり、
互いの仕事には干渉しない主義で、作風も異なりますが、
好きなものをつくるという姿勢は共通しているように感じます。

▲お父さんの作品。気付けば、今の竹之内さんがつくっているうつわと少し似たものを、昔お父さんがつくっていたということも。

▲工房の外に置かれた釉薬を入れた瓶には、雨除け代わりにお父さんの昔の作品が。型にとらわれず、あらゆる技法にチャレンジしていた姿が垣間見えます。

鹿児島は「薩摩焼」という有名な焼き物の産地であり、
特に宋艸窯が工房を構える姶良市では、
薩摩焼の一つである「龍門司(りゅうもんじ)焼」が伝統的につくられています。
しかし、宋艸窯がそれらの焼き物の名前を名乗ることはありません。
「自分たちが好きなものをつくっているから、
そもそも枠にはまらないし、縛られたくないんです」。

好きなものを好きなようにつくる。
その過程には、きっと苦労したこともたくさんあるでしょう。
それでも、自分たちのやり方を地道に貫いてきたことに、
竹之内さんとお父さんの心の奥にある芯の強さを感じます。

その姿勢は、宋艸窯のこれからについても同じようです。
「僕には大学生と高校生の2人の息子がいますが、
子供たちに継ぐことは強要したくないですね。
僕の親父さんも、僕に継げと言ったことは一度も無かったんです」。
それでも自分がそうだったように、いつか焼き物に興味をもってくれたなら、
その時はあたたかく迎え入れたい。
興味をもたず宋艸窯が途絶えてしまったら、それはその時。
子供たちにも好きなことを好きなようにやって欲しいから、流れに身を任せるのです。

竹之内琢さん

▲「なぜその釉薬の色を選んだんですか?」「なぜこのかたちにしたんですか?」など尋ねると、
「自分が好きだから」というストレートな答えを何度も返してくれた竹之内さん。
自分の気持ちに正直に、焼き物と向き合っていることが伝わってきます。


今後は、花器やオブジェなど立体的な作品づくりにも力を入れたいそう。
より創造性を活かせるものをつくることで、
ある程度同じものを納品しなければいけないうつわの仕事にも、
いい刺激が与えられるのではないかと語ります。

自然溢れた鹿児島の地で、手仕事を大切にものづくりに取り組む宋艸窯。
これからも自分が心惹かれるものを、自由につくることで、
おおらかで表情豊かなうつわを生み出してくれることでしょう。

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