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家事問屋の工場(こうば)を訪ねて

4. “伝え手”の仕事


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家事問屋という名前は、
“家事”の道具をつくる“問屋”であるという、
自分たちの立ち位置を真っ直ぐに表現したもの。
産地とともに生きる問屋であることを、
改めて大切にしたいという想いも込められています。

久保寺さんは、問屋とは“伝え手”であると定義します。
「つくり手であるメーカーの技術を、売り手や買い手に伝える。
売り手や買い手からは、必要としているものや要望を聞いて、つくり手に伝える。
そういうパイプとなるのが、問屋の役目だと思っています。
特に産地の問屋の場合は、燕三条という産地にある、
優れた技術を伝えることが重要なんです」。

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燕三条を案内してくれた後、
「僕は常々、産地っていいなあって思うんです」と目を細める久保寺さん。
「例えば僕が、『無事お客さんに納品できた!』と思って、
会社終わりに居酒屋に一杯やりに行くんです。
そうしたら、たまたま同じお店で、家事問屋の商品をつくってくれている
メーカーの人も酒を飲んでいたりするんです。
『無事に下村企販に納品できたー!』って。
そして僕自身は顔を知らなくても、その工場のさらに外注先の人も、
同じ席で嬉しそうに一杯やっている。
家事問屋の商品が動くことで、
こうして顔の見えるたくさんの人の役に立てていると思えるのって、
なんかいいじゃないですか」。

幼少期から燕市で育ち、お父さんや弟さんも同じ業界で働いてきた久保寺さん。
燕三条の産業に食べさせてもらい、
そして自分たちも少なからず貢献している。
そんな産地に根付く連鎖を感じていると言います。
だからこそ、産地の存続に対する想いは人一倍強いのかもしれません。

産地に生きる問屋の役目

スポット


燕三条では、磨き屋に限らず、後継者不足が深刻化しています。
特に燕三条の場合、家族経営の小さな会社が多いため、
その深刻さは他の産地以上だと言います。
「ここ3〜4年で、バタバタと工場が閉じてしまい、
瀬戸際に立っているところもたくさんあります。
でも、そこには僕たち産地問屋の責任も大きいと思うんです」と顔を曇らせます。

産地問屋のなかでも、安さを求め、
燕三条から海外のメーカーに、工場を変えるところが多いと言います。
問屋としては、お客さんが安さや量、スピードを求めるなら、
それに応えるために海外製に頼ることこそ正解なのかもしれません。
しかしその結果、それまでつくってきた産地の人たちは、
急に仕事が減ったり、工場を縮小せざるを得なかったりすることに。
「先が見えないから、自分の子どもに継がせたがらない人が多いんです。
だから、5年後も10年後も仕事があるという確信を持ってもらえるよう、
家事問屋では、一定の量の仕事を継続的にお願いするように心がけています。
みんなが少しでも長く仕事を続けられる環境をつくることが、
産地問屋の重要な役目の一つだと思っているので」。

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また、なるべく若い職人がいるメーカーを選んで、
仕事をお願いすることも大事にしています。
「年輩の職人の方が慣れているし、
仕事が速い分、安くつくれるのかもしれません。
それでも、後継者がいないと先が続かない。
今はまだ技術が荒く、仕事が遅くても、
若い人を頑張って育てている工場に仕事を頼みたいんです。
多少えこひいきしてでも、産地を残さないと」。

つくり手が残り、産地が残ること。
使い手に寄り添う一方で、
家事問屋が大事にしているもう一つのミッションです。
産地に根差し、ずっと使いたい家事の道具を、
ずっとつくり続けられるような環境をつくる。
それこそが、産地に根付く問屋の仕事だと語ります。

燕三条の技術と下村企販のノウハウが惜しみなく注ぎ込まれた、家事問屋の道具。
その使いやすさの裏側には、産地と使い手への熱い想いが詰まっていました。

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