HASAMIと馬場商店の工房を訪ねて | 工房訪問 | cotogoto コトゴト- ページ4

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HASAMIと馬場商店の工房を訪ねて

4. 波佐見の未来を背負って


マルヒロ直営店
マルヒロ直営店


波佐見有田インターチェンジのすぐ近くに、マルヒロの直営店があります。
お店の扉を開けると、目の前には1メートルほどの高さにぎっしりと積み上げられた器の地層。
建築デザイナー・関祐介さんのアイデアで、
“死に生地”と馬場さんが呼んでいる、素焼きの状態で不良があった器や
廃盤になり商品として流通できない器など2万5000点に
モルタルを詰めて仕上げたんだとか。

マルヒロ直営店


器でできたフロアに降り立つと、ちょっとドキドキします。
不良のため捨てられる運命にあった器たちを買い取り、再度命を宿らせる。
“料理を盛る”という本来の目的とは違いますが、
なんだか器の新しい可能性すら感じられます。

おしゃれな店内と個性ある器たちが話題を呼び、
今では波佐見町の人気観光スポットの一つになっているそうです。

マルヒロ直営店
マルヒロ直営店


何もかも順調なように見えますが、馬場さんは常に危機感をもっていると言います。
「最低限以上の器って生活必需品ではないので、
皆さん嗜好品として買っていただいているんですよね。
だから世の中の状況によっては、これから先も売れるかわからないし、
僕らの商品を取り扱ってくれているお店自体、たたまれてしまうところが多いのが現実なんです」。

そんな危機感を打破するために、馬場さんが考えているのが、
もっと波佐見に人を呼び、直営店への来客数を上げること。
直営店により多くの人が来てくれるようになれば、
すぐに全国的には販売できないような、実験的な商品づくりにもチャレンジできます。

ハッピータウン波佐見祭り

▲新里さんがイラストを手がけた「ハッピータウン波佐見祭り」のフライヤー。
限られた層の人だけでなく、子どもからお年寄りまでみんなに来てもらえるような、わくわくするデザインを目指したそう。


その第一歩として今年9月には、マルヒロを中心に異業種の若手たちが集まって、
「ハッピータウン波佐見祭り」というイベントを初開催。
「町にやって来る人が増えれば店が増え、
移住者が増え、Uターンして帰ってくる人も増えて町が盛り上がる。
そのためにまずは波佐見町のことを知ってもらうきっかけをつくりたかったんです」。

ハッピータウン波佐見祭り
ハッピータウン波佐見祭り


イベントでは、ライブやトークショーなどのほか、
大人も参加できる「おしごと体験ワークショップ」など、
窯業を中心とした産業の生産過程で生まれる、B品や廃棄物の問題を知ってもらうと同時に、
地域産業を次世代に引き継ぐという目的もあったそう。

自分達で地道に協賛を集め、行政にはほとんど頼ることなく開催しましたが、
4日間で1万人を集め、大成功を収めました。
「ものすごく大変だったので、毎年は開催できないかな~(笑)」とのことですが、
好調な滑り出しに、手ごたえを感じているようです。

産地を守り、産地で生きる

そば猪口


波佐見町に人を呼び込むと同時に、
もう一つ馬場さんが力を入れているのが、波佐見焼の技術継承です。
そのわかりやすい例が、馬場商店の「そば猪口」シリーズだと言います。
「波佐見焼って特徴がなく、どんなものでもつくれる技術力の高さが自慢なんです。
でも普通の人にとっては、そう言われたって、何から何までできるのかわかりづらい。
そんな“何でもできる波佐見焼”をわかりやすく伝えるために、
10軒の窯元が釉薬や絵付け、転写など、それぞれの強みを活かしたそば猪口をつくっています」。
つまり、「そば猪口」シリーズ一覧を見せれば、
波佐見でできることの幅が一目でわかる“技術の見本帖”を目指しているのです。

そば猪口


そば猪口のシンプルなかたちそのものにも、実は高度な技術が必要とされます。
「昔からある素晴らしい技術を知らない若い職人が多いんです。
でもそれは、コストを抑えるためなどの理由で、仕事として学ぶ機会が減ってしまったから。
仕事を発注する僕ら側にも責任があると思うんです。
だから、そば猪口は高台(こうだい)裏の削りにこだわり、
30歳代以下の生地職人ができなかった技術を用いています。
そうすることで、残すべき技術が受け継がれ、守ることができると思うんです」。

波佐見の風景

▲高台から波佐見町を見渡すと、いたるところに窯から伸びる煙突の姿が見え、窯業の町であることを実感します。


波佐見町に人を呼び込んだり、波佐見焼の技術継承に取り組んだり、
常に波佐見全体のことを考えて行動する馬場さん。
しかし、単純に波佐見を盛り上げたい!波佐見焼を守りたい!という想いとは少し違うと打ち明けます。

「波佐見町では、町の約3割の人々が焼きものに関する仕事に就いています。
でも分業制だから誰かが欠けると、つくれなくなってしまうんです。
そうなると、産地の焼きものを販売する僕は、商売が続けられない。
僕にとっては死活問題なんです。
だから波佐見に住む人や若者を増やし、
焼きものを継いでいってくれる人を増やしたいんです」。
波佐見を守るためというより、自分を守るため。
産地問屋という立場だからこそ、波佐見の未来を考えずにはいられないのです。

HASAMIで波佐見の名を広め、産地全体を活気付ける。
直営店やイベントを通じて波佐見を訪れるきっかけをつくる。
馬場さん率いるマルヒロは、これからも波佐見を動かす台風の目となり、
波佐見でしかつくれないものを、私たちに届けてくれることでしょう。

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