高橋工芸の工房を訪ねて

高橋工芸の工房を訪ねて

2015年12月公開

北海道の中心部に位置する旭川。
寒冷で湿度が低く、木材の保管に日本で最も適した地域であるといわれています。
日本、そして世界中から優れた木材や木工職人が集まり、
古くから家具生産を中心とする木工の街として発展しました。

そんな旭川で生まれた「高橋工芸」。
あたたかく優しい木の特性を生かした、
シンプルで実用的な木のテーブルウェアをつくっています。
今回は、そのつくり手である高橋秀寿さんに話を伺いました。




1. 高橋工芸の歩み


9月の旭川にしては暖かな日。
工房にお邪魔すると、半袖姿で2代目・高橋秀寿さんと奥さんの利佳さんが出迎えてくれました。

高橋夫妻
「写真なんて…」と照れる利佳さんが可愛らしく、気さくな印象のお二人
高橋工芸は今年50周年。
先代である高橋さんのお父さん・昭一さんが1965年に始めた、家族経営の木工製作所です。

昭一さんは中学校卒業後、すぐに家具の下請け業者に修行へ。
その後独立して高橋工芸を設立しました。
初期の高橋工芸は、主にろくろを使って装飾を施したテーブルの脚などをつくっていました。
しかし時代は装飾の少ないシンプルな北欧スタイルの家具へ。
ろくろ職人の技術を必要とする仕事は、家具業界から減っていきました。

そこで1985年頃から、ろくろ挽きによる食器などの小物をつくりはじめます。
北海道産のエンジュの木を使い、道内の観光地で観光客向けに販売していました。

作業中の高橋昭一さん
作業中の昭一さん。現在でもエンジュのシリーズは昭一さんの担当です
1992年、現在2代目を務める秀寿さんが高橋工芸に入社します。
秀寿さんは高校卒業後、建築の仕事をしていましたが、22歳で家業を継ぐことを決心。
木工職人としての修行を始めます。

そんな中、エンジュシリーズ一つに頼りきっている状況に不安を覚え始めた秀寿さん。
「観光客の需要の変化を感じたんです。
工芸品から食べ物に、お土産の売れ筋が移ってきたなと。
観光客以外の、もっと広い層をターゲットにできる商品をつくろうと決意しました」。
こうして秀寿さんは、父・昭一さんがつくるエンジュシリーズの
次を担う新しい商品開発に乗り出すのです。

当時は、まだ木のテーブルウェアが現在ほど普及していなかった時代。
木のテーブルウェアといえば、白樺の木をくり抜いてつくる、
北欧の伝統工芸品「ククサカップ」のような厚手でごろっとしたものが主流でした。
そこで秀寿さんは、あえて逆をいく「薄さ」を売りにした商品をつくり出したのです。

Kami glass ワイド (高橋工芸)

長い試行錯誤の結果、ようやく2005年に生まれたのが「Kami glass」。
強度を保てる範囲で極限まで薄くした、紙のような全く新しい木製グラスです。
これまでにない、斬新な高橋工芸の自信作。
しかし当時の世間の反応は意外なものでした。

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